くり(か)えーしょん

西村取想

TOKIアンソロジー第3作。夕暮れへと向かう時間を表現したブレンド「16:47 me-time mellow」から着想を得た10首の連作短歌。日々の倦怠に埋もれそうになりながら過ごす「わたし」は、黄昏時に深く静かな覚醒を体験する。

憧れはいつから焦りになったのか 夜明けの街にさめた星々


暖房が余計なほどの人いきれ誰も彼もがなにかに生きて


額縁の向こうの青は遠くまで 光の粒が乾かすこころ


反射する陽光たちがひややかな空気を揺らすポンクチュエーション


公園の、ひとがねれないベンチにて日向ぼっこをしている猫だ


Enterを押せば世界がすこしだけあたらしくなるらせんのように


さわやかな香りにふるう あとすこしがんばるひとでありたく思う


くりかえす歩幅の日々の手を取ればあかねの空のぬくもりがあり


寒空のしたで世界を知る息がわたしのなかの熱を教える


黄昏に埋もれるひとの群れに立ち止まれわたしのときのはじまり

西村取想(にしむら・とるそう)

京都在住。2017年末から短歌を作りはじめる。2019年、はてなブログに投稿した「告白したらふられたので『その女の子のことを想って過去に作った短歌から選んだ158首』を紙に印刷して本人に渡したら1首ずつ感想をくれた話」が話題を呼ぶ。2023年、『デザート2024年1月号』(講談社)の「現代短歌×少女漫画アンソロジー」特集に原案短歌を提供。2024年、原宿にて開催された「wedding march-まちを、もっと幸せにしよう。」展に書き下ろし短歌を提供。現在購入可能な著作に『四百センチ毎秒の恋、あるいは』がある。日常の見方を変える歌を作りたい。Xアカウント:@N_torso

物語の余韻を、ご自宅で。

この作品は、TOKI coffeeのブレンド「16:47 me-time mellow」の時刻からインスピレーションを得て書き下ろされました。ご自宅でコーヒーを飲みながら、物語の世界観にもっと浸ってみませんか?

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